相続人調査(戸籍謄本収集)の手順

相続手続きをする上で避けられないのが、戸籍謄本の収集です。ここでは、基本的な戸籍の集め方の流れを説明します。戸籍にはいろいろなパターンがあり、ここに書いた例がすべてではありません。戸籍謄本収集に自信がない場合には、早めに専門家にご相談ください。

相続に必要な戸籍の数は多い

相続手続きの際には、相続関係がわかる戸籍謄本一式が必要になります。人の戸籍は出生から死亡まで同じではなく、婚姻や離婚、転籍、戸籍の改製(様式の変更)等により変わるので、1人の人につきいくつも戸籍があるのが普通です。

こうしたことから、相続手続きに使う戸籍謄本は、必然的に数が多くなります。また、戸籍は本籍地の市町村役場で管理されているため、たいていは複数の役所から取り寄せなければなりません。高齢の方の場合、古い戸籍は読みにくい上に、子供や兄弟姉妹の数が多いこともあり、かなり大変な作業になってしまいます。

 

相続に必要な戸籍謄本を揃える手順

まず、亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍が必要になります。揃える手順は、以下のとおりです。

1. 被相続人の住民票の除票を取得

被相続人の住所があったところの役所で、本籍地入りの住民票を取ります。亡くなった人の住民票は「除票」と呼ばれます。

 

2. 被相続人の戸籍謄本を取得

1により被相続人の本籍地がわかりますので、本籍地において亡くなったときの戸籍謄本を取ります。被相続人の死亡により戸籍に誰もいなくなっている場合には除籍となっていますので、戸籍謄本ではなく除籍謄本となります。

 

3. 被相続人の1つ前の戸籍を取る

2で取得した戸籍謄本(または除籍謄本)を見て、1つ前の戸籍を取ります。被相続人が婚姻などでその戸籍に入ってきている場合には、「身分事項」の「従前戸籍」の欄を見ればわかります。

戸籍図

なお、転籍によりその戸籍が作られている場合には、「戸籍事項」の欄に記載がありますので転籍前の戸籍を取ります。また、法律による戸籍改製が行われている場合には、同じ戸籍の古いバージョン(改製原戸籍)がありますので、そちらも取る必要があります。

戸籍図2

コンピュータ化前の戸籍は縦書きになっており、本籍・筆頭者の次に行に戸籍事項が書かれています。

 

戸籍図3

 

4. 出生まで遡って戸籍を集める

同じ要領で、被相続人の出生まで戸籍をさかのぼっていきます。なお、高齢の方の場合、出生時の戸籍は戦前の家制度にもとづくもので、見方が複雑です。わからない場合にはその都度役所で教えてもらうか、早めに専門家に任せてしまいましょう。

 

5. 相続人に該当する人を探す

被相続人の配偶者は必ず相続人になりますが、それ以外では子供、父母、兄弟姉妹の順番に相続人になります。被相続人の戸籍を見ながら、相続人になる人を確認していきます。

(1) 子供がいる場合

子供全員の現在の戸籍までを取ります。なお、子供が亡くなっていても、その子供である被相続人の孫がいれば相続人になるため、孫の現在の戸籍までを取る必要があります。

(2) 子供がいない場合

父母が生きていれば相続人になるため、父母の生死が確認できる戸籍を取ります。

(3) 子供も父母もいない場合

この場合、兄弟姉妹がいれば相続人になります。親が再婚している場合には前婚の子供も兄弟姉妹ということになりますので、親の戸籍まで遡って兄弟姉妹の有無を確認する必要があります。兄弟姉妹が亡くなっていても、その子供である甥や姪がいれば相続人になるので要注意です。

 

6. 相続人の現在までの戸籍と戸籍附票を取る

相続人全員について、被相続人とのつながりがわかる戸籍と、現在の生存がわかる戸籍を揃えます。相続人の現住所の確認も必要なので、相続人の現在の戸籍がわかったら、その戸籍の附票(住所の変遷が記載された書類)も取ります。

 

役所での戸籍謄本の取り方

戸籍謄本は、市町村役場の窓口で請求する以外に、郵送でも請求が可能です。以下、役所での請求方法の概略を説明します。詳しい請求方法については、各市町村のホームページで確認してください。

その1:窓口で請求する

運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの本人確認書類を持って窓口に行き、窓口にある交付請求書の用紙に記入して請求します。
親や子など直系の親族の戸籍謄本についてはそのまま請求できますが、他の親族については相続手続きに使う旨を証明する書類を要求されることがありますので、事前に役所で確認してください。

役所の発行手数料

種類1通あたりの手数料
戸籍謄本450円
除籍謄本750円
改製原戸籍謄本750円
戸籍附票300円程度(※役所によって異なる)

 

その2:郵送で請求する

役所のホームページで交付請求書をダウンロードし、これに記入して郵送します。郵送時には以下のものを同封します。

定額小為替

料金分の定額小為替が必要です。定額小為替は郵便局で購入できます。様々な金種があるので組み合わせは自由ですが、1枚につき100円の発行手数料がかかります。

本人確認書類のコピー

運転免許証等のコピーを用意します。

返信用封筒

返信用切手を貼った返信用封筒を同封します。

 

まとめ

戸籍は複数の役所から集めなければならないことが多いため、戸籍謄本収集には思いのほか手間がかかることがあります。戸籍謄本を揃えなければ、相続手続きはできません。遠方の役所から郵送で戸籍謄本を取り寄せなければならないには、時間もかかってしまいます。相続が発生したときには、できるだけ早く戸籍謄本収集に取りかかるのがおすすめです。